■ その時、右端の机にあるディスプレイのスイッチが入った。
辺りが白くなる。
荒い八ミリビデオの映像が流れた。移動する車の中のようだ。白と赤がちらつく。紺色の帯のようなものはネクタイだろうか。
真壁の顔が映った。眼鏡のレンズが片方割れている。額から血が流れている。
葉子の中国服がまくれていた。黒い猿ぐつわをされ、トカレフが突きつけられている。白いのは太股のアップだ。
「ごくろうさま。葉子はまたお借りします」
北沢の声だ。実際よりも高く聞こえる。
上の階に残してきた葉子と真壁が襲われた。
「こんなに早くみつけるとはなかなかやりますね」
映像は葉子の横顔をアップに揺れながら止まった。
私たちは画面の前に集まった。
「どうしろっていうんだ」
私は画面に向かって大きな声を出した。
「そっちにも聞こえているんだろう。条件はなんだ」
微かにサイレンの音が聞こえる。反響している。
「待っていてください。今迎えがゆきますから」
そこで画面が切れた。黒くなる。
公安が近づいてくる。北沢が公安を利用している。奴は党幹部の子息達との関係を誇示していた。