■「スタン・グラネードです」
 西ドイツで開発された対テロリスト用の手榴弾である。閃光と金属音で相手の神経を一時的に麻痺させ、その間に襲撃を加える。
「これは南ア製ですが」
 私は何を聞いても驚かなくなっていた。南アフリカから上海に武器が流れてきてもそう不思議ではない。
 走羽の配下がシェルターの中を物色した。小さな工場のようになっている。ステンレス製の清潔な器具がいくつもあり、それらは複雑な配管で繋がっている。ダクトがあり、それは空気清浄装置に集約されている。
 髪の短い男が首を振った。ナイロンでコーティングされた包みをふたつ持ってきた。中には白い粉が入っている。北沢は覚醒剤をあらかじめ持ち出していたようだ。僅かに残ったのがこのふたつなのだろう。
 ドラム缶に入った薬品が数本残っている。走羽は白い粉の包みをナイロンザックの中に入れた。
「爆破します」
 走羽がナイロンザックの中から粘土のような塊をいくつか取り出した。髪の短い男ともうひとりがその包みをふたつに引き裂き、部屋のあちこちに分散して置いた。細い信管を差込み、コードを伸ばしている。コードは一本に縒られる。