五一 バックブラスト
 
 
 
 
■ 私はイングラムを撃った。引き金を引くとマガジンがたちまち空になった。銃身が暴れ、右を向いてから円を描く。あたらない。
 
「セミオートにするのよ」
 葉子がベレッタで応戦している。真壁は床に伏せている。
 走羽の手下がバンの荷台から積み込んだ武器を全て降ろしていた。
 装甲車が角を曲がった。
 正面がみえる。五十メートル程までに近づいている。
 二十ミリ機関砲がバンのガラスを割った。我々はコンテナの影から動けない。
 バンの荷台には小さなモトクロッサーが積まれていた。シートを剥がすと黒く塗られた小振りな車体がみえた。八十か百二十五CCのモトクロス用バイクである。
 AKの銃弾を受けて走羽の手下がバイクとともに倒れた。
 死んではいない。
 走羽がグレネードランチャーを発射した。
 短い発射音とともに、弾は弧を描き装甲車の背後に落下した。
 黒っぽい背広を着た男達が二人ほど吹っ飛んだ。
 走羽が髪の短い男に指示した。彼は手元にあるダンボール箱から一本の筒を取り出し、背中に背負った。バズーカ砲、M七二LAWのようだ。
 
「援護」
 走羽の指示で私たちは一斉に銃を撃った。セミオートにするとイングラムの銃身は比較的安定する。銃の先端にぶら下がっているナイロンのハンドストラップを絞る。
 髪の短い男が右斜め横のコンテナの影に隠れた。
 丸い筒を引き出し、腹這いになって躯を斜めにした。
 一度振り向く。
 真壁に向かって脇によれと手で合図している。真壁は背後のコンテナから四つん這いで離れてゆく。