■ 音がしない。しないくせに空気が澄んでいる。全ての空気を入れ換えたような清潔な密度がある。
「急ぎましょう」
走羽が私にイングラムとマガジンベルトを渡した。私は銃の背後についているバットプレートを起こしストックを伸ばした。私の腕では肩で固定しなければ銃が暴れてしまう。三十発のマガジンを装着する。腰にベルトを巻く。
その時、天井から一本のスポットが照射された。
誰かいるのだ。
スポットはゆっくり動き、倉庫全体を探るように廻っている。
「散れ」
走羽が短く声を出した。
隣り合わせたコンテナの背後にしゃがんだ。
離れたところで大型エンジンの始動音が響いた。
動物が唸るように何度か空吹かししている。
スポットが倉庫の一番奥にあたった。四輪式の装甲車だ。
エンジンを吹かしゆっくりこちらに向かってくる。
「なんでこんなもんがあるんだ」
「わかりませんよ」
装甲車の上から小銃が発射された。入口を捜していた走羽の手下が撃たれた。躯をくの字に曲げ壁の傍に倒れる。
重い音がした。音には間隔がある。コンテナに穴が開く。
装甲車の前部に二十ミリ機関砲がついている。コンテナの前方に駐めてある小型トラックに当たる。ドアがバラバラになるのがみえた。薄い紙が舞っているようだ。
走羽がライフル、AR一六を撃った。
装甲車の前部に火花が散っている。装甲車の後ろには何人かいて、AK七四を持っているようだ。
北沢は先を読んでいたのだ。