五〇 COLLECTORS' ITEMS
■ ゲートから敷地の中に入った。広い。単純なビルの現場ではなくひとつのブロック程の広さがある。ところどころ強力な水銀灯が照らしているが、こちらまで届かない。
舗装された細い道を進むと完成図の看板が立っていた。
その前で一度車を停めた。
地上六十階のビルが二つ並んで建っている。先にゆくほどなだらかに細くなり、背の高いリキュールの瓶を並べたようなかたちだった。
両方のビルの中程に透明な通路が二カ所かかっている。双方のビルをそれで行き来するのだろう。その間に丸いオブジェがぶら下がり、どうやら地球儀のようだ。
大陸の中程が赤く塗られている。塗られた部分は正面を向いていて、そこを中心に地球儀が廻るようになっている。中華思想は健在だった。
「完成は二○○五年だそうです」
走羽が気もなく説明する。ふたつのビルの間には低い屋根のドームが広がり、センターや駅になるようだ。
走羽が合図し、車はゆっくりと進んだ。
大きく地面が抉られている。基礎工事の現場だ。抉られた一角に道路は下っている。滑り止めの塗装が施されている。
抉られた地面の中程に鉄製のドアがみえた。内部への入口だろう。黄色と黒に塗り分けられ、大型トラックがすれ違える高さと幅だ。
私たちは滑り止めのゴム舗装が敷かれた坂道に車を乗り入れ、下った。
ドアの前で停まる。
走羽の手下が入口の配線を操作した。ゆっくりとドアが開く。
中は巨大な倉庫になっていた。倉庫にしては天井が高い。ひとつのドームのようにも思えた。これが駐車場なら五百台は入るだろう。
何台かの大型トラックや工作機械が放置してあった。コンテナが幾つも積まれている。ところどころ常夜灯が点いていた。
私たちは倉庫の中に車を入れた。真壁の運転する日本製のバンはドアの外に停める。
コンテナの影に車を隠し、私たちは外に出た。走羽が配下の者に指示をしている。ひとりが小無線機を持って地下シェルターの入口を捜しにいった。
葉子と真壁がコンテナの背後に集まる。
走羽がおかしいと呟いた。私も奇妙な気配を感じていた。