■ 走羽が残された武器を運んできていた。ボックス型のバンの後部には、茶褐色のダンボール箱がいくつも積まれている。髪の短い若い男が一緒だ。他にふたり、走羽の配下が駐車場の入口をかためている。
走羽が私にパソコンを貸してくれと言った。黒い上着の胸ポケットから一枚のフロッピーを取り出す。
「これで場所の特定ができるでしょう」
私は走羽とともに三十二階の小さな事務所に昇ることにした。走羽は小型のアタッシュケースを持っている。事務所には広告の版下をつくる何台かのパソコンがそのまま残っている。真壁をも連れてゆくことにした。
事務所に入り、真壁と金の相談をした。小切手を用意するように言ってあったのだ。
「とても一億は無理ですよ」
「そうかな、在日米軍にはタダで土地を貸しているじゃないか」
私は小切手を真壁から受け取った。額面には五千万円とある。
「いいでしょう。残った品物はわたしが処分します」
走羽が無表情に言う。北沢の覚醒剤を捌くつもりなのだ。否定すべき理由は私にはない。走羽の迫力に真壁は言い返せないでいた。