四四 岩場の植物
 
 
 
 
■ ロビーに真壁が待っていた。
「捜していたんです、どこにいたんですか」
「どうしたんだ」
「昨夜、T市の大学病院が襲われました。警官と銃撃戦になりイスラム原理主義者を名乗る男が逮捕されています」
 顔がこわばるのが自分でもわかった。そこは冴が入っている病院である。
「それで」
「詳しいことはまだわかっていません」
 私たちは部屋に入ることにした。葉子が閉め切った部屋の窓を開けた。
 真壁は灰色のハンカチで額をぬぐいながら話し始めた。
「侵入にはスタンガンとガスが使われています。警備の人間がスタンガンで無抵抗にされ、数人が侵入した。奥山がひとりを射殺しています。千葉県警の警官が一人死亡しました」
「奥山がいたのか」
「ええ、丁度居あわせたのだそうです。今は連れの方とともに手当を受けています」
 
「冴さんは」
「わかりません。彼女の部屋を狙ったのは確かです」
 スタンガンとは高電圧の護身用器具である。容易に入手することができる。私は日本に電話をした。吉川と晃子に連絡を取ったが不在だった。晃子の留守番電話に急いで吹き込む。晃子のところの電話はポケ・ベルに転送する仕組みになっていた。
 真壁に言い、奥山と話せるよう警察関係に連絡をとってもらう。電話を廻されるばかりでラチがあかないようだった。