■「ホローポイントだったらしいぜ」
 吉川が口を挟んだ。私がふりむくと吉川は続けた。
「フルメタルジャケットというのが完全に包装された銃弾だ。先を包んでいる合金を剥がし、鉛を露出させる。そうしてガーバーナイフでその先端を一定部分平らにし、さらに十文字に溝をつける」
 吉川は説明する。
「狙撃物にぶつかると銃弾の先端にある柔らかい鉛は口を開く。醜い薔薇の花のようにな。内部組織を完全に破壊し、体内にとどまる」
 晃子が補足した。
「あまりに残虐なので、国際条約で使用が禁止されているものなの。すこし前まで大型の動物を殺すためだけに使われていたわ」
 奥山は黙っている。何かを噛みしめているようでもある。私は舌が渇いてゆくのに気付いた。喉を鳴らそうとするが旨くはゆかなかった。
「麻取としてはこれで終わりです。片一方の肺が潰れたんですから」
 奥山が口を開いた。
 
「でもね、奴、爆破されて形のなくなったあいつ。あいつはまだ二十五だったんですよ。こないだ結婚したばかりだった。麻取にきてまだ一年経たなかった。奴の肉片がわたしの頬に張り付いていたんです」
 奥山の右手が震えている。
 上着の下、麻のシャツの背中の処を、冷たい汗が一本伝わるのが私にははっきりとわかった。