■ 看護婦が会話を制止した。奥山が横になる。
制服を着た婦人警官はドアの前に立っている。その奥にはもうひとつ部屋がある。婦警は百七十センチ程あるだろうか。横を向いた腰のあたりが硬そうだ。普通、婦警は拳銃を持たないが、バックルにニューナンブを装着し、肩の脇から吊っていた。婦警ではないのかも知れない。
「奥山さんは死んだことになっているの。そう発表されたわ。勿論身分は隠されていたけど」
晃子が説明する。それでこのビルに移送されたのだろう。
「車が爆破されたのは外資定期船埠頭の入り口だった。長いこと開発に躍起になっていただろう、例の臨海副都心のすこし先にある埠頭だ。奥山と若い相棒は、中国からの覚醒剤ルートを追っていた」
吉川が言う。
「巧妙な仕掛けだった。イグニッションを廻しエンジンをかける回数をカウントする。一定の回数になると起爆するセンサーが付いていたんだ。勿論、プラスチック爆弾だ。相棒は腰から上がなくなっていたらしいぜ」
「素人じゃないわ」
晃子がのめり込むように言った。