■ カーキー色の戦闘服を着た兵士がトラックの荷台に並んでいる。
 私は車を運転していて、その背後についている。彼らは鉄兜の下から私の方を注視していた。
 戦闘が始まる。
 丸い砲塔の戦車と六輪の装甲車が轟音と共にアスファルトを削り、そのまま民家を押し潰す。ところどころ火の手があがっている。兵士が市民に焼かれ鉄柱に吊されているようだ。
 匂いがする。
 ここは何処なのか。背後にはみたこともない高層ビルがスポットを浴びていくつも並んでいる。ホストを守れという声が聞こえる。
 
 知ったことではない。
 そう呟くと目の前が反転し別のものになった。白い布が横切る。
 ズボンに煙草の灰を落とした。慌てて眺めていると、パーサーがおしぼりを持ってきて笑った。
 私は狭い国内線のシートの上で短い夢のようなものを反芻していた。昨夜、熱にうなされながら視たものの断片のようだった。
「ぼんやりしていては駄目ですよ」
 その通りなので黙っていた。膝のところに小さな穴が開いた。買ったばかりなのに。