銀色の鱗。
■ 大黒埠頭はかつて、週末の夜ともなると、改造した車の集合場所だった。
年々規制が厳しくなって、時間を区切って閉鎖される。
脇にクラウンのPCが停まっていて、その隣に若い警官が警棒を持って立っていた。
いわゆる歩哨であるが、地味でそして忍耐力のいる仕事かもしれない。
■ ベイブリッジ脇にある芝浦パーキングも、ランクルの特殊車両で入り口がふさがれていた。
あそこはどちらかと言えば、メルセデスがポルシェに委託して作ったW124のE500/500E、またはkawasakiのライムグリーン、空冷4発の単車などが集まる。
インターネットが普及してから、それはミニオフと呼ばれるらしい。オンラインでの交流に対して、オフラインだからということだろうか。
まだ暑いというのに膝下まであるブーツを履いた30代後半から40代までの男たちが、缶コーヒーを片手に語り合う。
普段はまっとうな勤め人をしている彼らが、時々だけは別人になるのである。
■ 私はと言えば、ボルボではない車で、大黒からの昇り坂を加速していた。
乗って一時間。時々床まで踏んでやらないと車の挙動は手元にこない。
シートやステアリング。それからエアコンの温度設定を細かく触る。
誰もいない直線で、1/2くらいのブレーキを踏む。
ABSが動作する遥か手前である。
左右に振られないことを確認してから、少し真面目に走り出す。