二丁拳銃のテーマ 4.
 
 
 
■ 本来は運河沿いのホテルがいいのだが、とうの昔に廃業し、今は24時間のディスカウントになってしまっている。
「夜の魚 一部」を書いていた頃、確かそれは94-95年にかけてのことだったが、当時はまだ泊まれたような記憶がある。
 当時私は30代半ばだった。あてもなくそんなことをしていたのだろう。
 まだ湾岸線は開通してなく、2リッターのドイツ車で尻を流していた。
 
―――
 
 本牧の外れの引込線から右に曲がるとその先は行き止まりだ。
 背の高いコンクリの壁をよじ登ると、黒く粘る海が見える。
 海とはいっても実感はない。薄い雨に雲が浮かんでいた。
 壁の横にぽつりぽつりと車が駐まり、車高を落とした白いセダンのボンネットの上に若い男が座っている。
  光るものを持っていて、近づくと、釣り竿を照らす電灯のようだ。
 伸びかかったパーマの頭を斜めに、バンパーに右足をのせ、考える格好で竿の先を照らしている。標識が半分取れかかっていて、「国際埠頭」と書いてある。
 海は見えない。
 音楽もきこえない。
 
(「夜の魚 一部」序)