上着手に持つ。
■ 髪が伸びたことで時間が過ぎたことを知る。
数本白髪もある訳だが、まあよく保っている方だということにしておこう。
夏のセールの頃、綿の上着を一枚買おうかと思ったことがあった。
元町に本店がある、ある洋服屋の代物である。
色は紺で、三つボタンなのが残念だった。私は二つボタンが好きである。
紺は色が褪せるだろうね。
それは仕方ないですね、気にいったらどうしても洗濯繰り返しますから。
五十代の店員は、そういってにやりと笑う。
これ中国製? いや日本製。
■ そんなやり取りをして頭を下げ、別れたのだが、今も少しばかり気になる。
買っておけば良かったかな。
で、その後銀座で、半額になっているという赤いブルゾンをふらふら仕入れたのだから仕方がない。一日着ただけで、それから夏だ。
なんとなく後部座席に放り投げていて、振り向くと黒に朱色である。
若作りしたいのかしらと、そのたびに思う。