すこし湿った空 4.
■ 秋の気配がする。
それは夜の空の色でわかる。
サンルーフを開け、適当に流していると、遠くにある筈の灯りが昨日より近づいていて、上の方では風が強いのだと気がつく。
ナット・アダレィのアルバムの中に「Summertime」があって、マイルスばりにミュートで吹いていた。ミュートは陰影を付けるに適しているが、自意識の奥深さが鬱陶しく感じる時にはこれくらいでもいいのだろう。
水で薄めて聴く。
■ 最初の一口は水割りで、ということを時々やる。
旨いと思ったり、やや酔って身体が軽くなったりするとショットに替えてゆくのだが、そうなるとこんどは煙草もきついものが欲しくなって困る。
銀座に菊水という古くからの喫煙道具などを売る店があるが、私はそこで1200円くらいのライターを買っては使っている。ガスを入れることができて、火が葉巻やパイプ用に斜めに出るものだ。
今まで五つか六つ買った筈なのだが、今捜してみるとひとつも見当たらない。
酔って置いてきたのか、壊れかけたソファの下辺りに転がっているのかとも思う。
これがダンヒル辺りだと、勿体無くて決して無くすようなことはしない。
とは思うのだが、時計を無くしたこともあるので、そうもゆかない。