すこし湿った空 3.
 
 
 
■ 電池が切れるとどうなるかというと、ぐったりする。
 薄く頭まで痛くなってきて、生理痛のそれをコーヒーで飲む。
 40代もいいところまでゆくと、あれこれガタがくるものだけれども、頭踏んでも死なない北澤という言い方が一部ではされていて、負けたフリしてしぶといところもある。
 ま、それは、若いうちにムゴーイ目にあってきたからだよ、とうそぶくのだが、人生の早い時期になんにせよピークを迎えるというのはその後が辛い。
 
 
 
■ かつて山本夏彦さんが、自らが主催している雑誌について、よく潰れないですね、と聞かれ「それは全盛期がなかったからである」と答えていた事を覚えている。
 聞くほうも聞く方だが、男なら殴られるところだが、虎ノ門辺りに生息する、育ちはいいが何処か野暮ったい妙齢が相手だったのだろうと思われる。
 全て満ちたものは欠ける。
 美人の寿命は短い。
 お供えの油揚げと同じくらいである。
 
 
 
■ 話が逸れた。
 美人というのはそのあいだになんとかするものだからそれでいいのだが、こと男の場合はそうもゆかない。
 長期戦で臨むことになる。
 その時その時に策略というのは、あるようなないような。
 ビジネス書を山のように読んでも、どうにかなるものでもないということにも似ている。