無駄の効用。
 
 
 
■ 薄い頭痛がして、夏風邪をひいたようだった。
 しかし〆切があったりして、PCの前に座っている。全くやる気がしない。
 緑坂の読者はご存知だろうが、私は比較的車のマニアである。
 しかし当節流行のものではなく、一つ前か二つ前、その欧州車かアメ車が好きだという癖があった。厄介を呼び込む。それでいて短時間に乗り換えるということは滅多になく、10万キロを超えて、ああエアコンのコンプレッサーが駄目になってますね、タイミングベルトも交換かな、というところまでひっぱるのが今までの常であった。
 要は潰すのである。気にいると同じ車を二台続けたこともあった。
 
 
 
■ 今回、93年型くらいのジャガーのオープン、ドイツで改造された4人乗りというものを検討していた。XJ-Sのアーデン仕様である。これは12気筒。5.3リッターのものだった。アーデンではないオリジナルのオープンは2人乗りである。
 いつだったかの冬、外苑西通りにあるスーパーの前に、初老の男性がこのグレーを停めていて、奥様の買い物を待っている。そうしたかたちをみかけたことがあり、それ以来、心揺れていたのである。身分不相応ではあるのだが。
 無駄の塊といった12気筒。その長いボンネットと低い幌。
 都心を流す以外に使い道はないような、パーキングスペースにも簡単に入れられないかのようなところに、意味なく惹かれていた。
 価格は国産3リッターセダンの新車程度。元が1200?1400くらいしたものだから安価になったとも言えるのだが、ここには落とし穴があって、12ヶ月点検でほぼ40ほどかかるのが常である。ダイムラーのDD6同様、12気筒というのはとんでもないのである。
 これはメルセデスのS600なども同様で、すこし分かった人は240や320を選ぶのだと。
 
 
 
■ XJ-Sにも6気筒の4リッターがあり、こちらもメンテの安心感から人気がある。
 ただハーフレザーになって、この年式だと真ん中のモケットが痛んでいることが多い。 あの年式の4リッターでは、すこし遅いかも知れないな。
 そんなことを、古い車雑誌のバックナンバーを捲りながら考えているのだからマニアというのは愚かである。0-100のデータに赤ペンを入れたりする。
 
 車なんて動けばいいという説も全く正しく、ある側面ではそちらの方が粋にも見える。 夏場、80年代から90年半ばまでのジャガーがどれだけ高速脇に止まっていたことか。
 ルーカスの冷蔵庫は暖かくなる。という冗談が、冗談ではなく通用するのが暫く前までの英国車だった。燃料を送るポンプがいかれて、その交換が数年に一度。放っておくとガソリンが漏れて燃えることもある。昔の単車のキャブのようである。
 津々浦々、我にも還るのだが、かといって国産7人乗りが欲しいと思えないのが困ったところだった。
 この辺り、自分の気持や状態がどちらを向いていたかが薄く分かってくる。