鳥、雲に入る。
■ あるとき、都心にある都営アパートの裏手に入った。
公園があり、よじ登る枠組みがあり、いくつものベンチがある。
ベンチには団塊の世代よりも少し上、万博の頃に社会人だったろう男達が座っていた。 桜の下に若い母親達が集まっている。
廻りには子供もいて、そこで昼間の宴会をしているらしい。
花見には竹輪がいいと何処かのスーパーに張り紙がしてあったことを思い出したが、さすがに傍による訳にもゆかない。
ひとり、まだ一歳に満たない子供が庇の下で仰向けになっていた。
■ 私は空を見上げる。
空には雲があり、それは桜の色と似通ってもいる。
薄眼になれば、どこからが花なのか、俄かに判別はできない。
横切るものがいくつかあって、ただの影なのだが、鳥のようにもみえる。
鳥は集まっては離れ、それから急速に上向きになっていった。
この先は路地である。
池田先生と代々木方面のポスターが一軒置きに貼ってある。
改革と書かれたものも隣にあって、つまりは付き合いということなのかもしれない。
昔だったら、ここに眉毛の濃い方が殺虫剤を片手に持っていたところだ。
■ 100円で缶コーヒーを買う。
20円安いのは随分なような気がする。
公園の横に保育園があって、砂場には誰もいなかった。
すこし古くなった桃色のカーテンの後ろが給食室で、頭に頭巾を被った妙齢中程と前半が、首を傾けて何かを作っているようなのだが、粘土をこねていただけかとも思う。