殿山泰司さん。
■ そもそもオレは女ギライである。オレはスケベェであるが、女ギライである。そこのところが女どもには分かっていない。だから女はキライなんだ。まったくパンティをヒッペがして、塩でもぶちかましてやりてえな。マアヒドイオ下劣、アンタとは絶好ヨ。
まったく、この世の中で、オンナくらいウルサクてイヤラシイものは居ない。どうして、あんなモノが、ノウノウと存在しているのが、オレにはサッパリ判らない。それも、ニッポンだけじゃなくて、世界中に存在してるってんだから、全く不思議なことである。
オレの友達に、スケベエは沢山いるけど、オンナを人間と思ってる奴は、一人も居ない。もし居たとすれば、それはオレの友達ではないぞ。
みんなオンナのためには、口に出して言えない程苦労しているのである。泣いているのである。死ぬ程の思いもしているのである。唯々、夜イヤ昼間でもいいけれど、オンナとオネンネするのが大好きなために、じっと辛抱しているだけのハナシである。オレは友達諸兄の健闘を心から祈ってやまない。
頑張って下さいよ。
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■ これは、俳優、故・殿山泰司さんの文章である。
「漫画読本」というセンスの良い雑誌に、昭和三十七、八年頃連載されていたもので、確か題名は「三文役者の無責任放談」とかいうものだった。
実におもしろい。
内容もおもしろいけれども、まず、語り口がいい。
なにものかをブラ下げていることに対するある種の覚悟と、好きでブラ下げてんじゃねえや、とでも言うべき裏腹の哀愁が、ソコハカとなく滲みでている名文である。
殿山さんは、飲む、打つ、買う、三道楽の大ベテランとして、つとに勇名をはせられた。
女性にモテルことでも有名であった。
沈鬱な顔で人生について語るより、愛だの恋だの蜂の頭だの並べるよりも、こちらの方がなんぼか宜しい。第一、根性が座っている。
あんた、馬鹿ね。と言いながら、女性もそこで笑っているのだった。
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○「緑色の坂の道」vol 5
93年あたり