若いってすばらしい。
■ 男なら大抵そうだと思うのだが、自分の若い時の写真を見るのが嫌である。
「なんて生意気な奴だろう」
「何もワカランくせに、どうしてこんな顔をしているんだろう」
等と、声にはしないが、胸の中で苦々しくおもう。
■ じゃあ、今の方がいいかというと、そこは微妙で、失われた髪の毛や肌のハリや、回復力などについて惜しむ気持ちは強い。
それとはまた別の次元で、
「あの時こうしなければ、いまはこうなっていたカモシレナイ」
と、配偶者を眺めてみたりする午後もある。
役者の、故・殿山さんは「、傍におられた女性のことを「側近の女」と呼んだり書いたりしていたが、時々の対談でそこに触れると、終いには泣きだしてくるのが常であった。 なんでああ、コワクなるかね。
何処からあの自信はくるのかね。
植民地ニッポンの男性諸君。
いけね、独立国だった。
■ わからないが、話が逸れてゆく。
ともかくコワイのであるが、何も分からない裡、つまり若いあいだは、そのコワサの質が違っていたように私には思える。
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○「緑色の坂の道」vol 794
94/05/01