諸君。
■ という言葉を久しぶりにテレビで聞いた。
誰が、というのは野暮なのでやめておこう。
山口瞳さんの時代だな、と私は懐かしく思った。
毎年、成人式の頃合に、諸君と呼びかける洋酒の新聞広告があったのだ。
■ 諸君を英語でいうと何というか。
恐らくは、チャーチルが英国兵士に呼びかける原文を当たれば良い。
ヤローども、よくやったぜ。それをもうすこし上品に言いかえればよろしい。
山口瞳さんの「男性自身」には、気に入った靴下を深夜、ホテルの風呂場で洗う男の姿が出てくる。
だって気に入らないものを履くのは嫌じゃないですか。
と、彼は言う。この彼が、先日テレビでみた男性であった。
こうしたことがお洒落だと、私は若い頃に感じ入った。
靴下などは、気に入ったものが二足あればいいのだと考えた。
■ 山口さんは一方で、そこいらにあるものを適当に着て、それでいて似合ってしまうという男のことも書いている。こちらは吉行さんの着物姿である。
どことなく、下にパジャマを着ているような風情だったのだろう。
あてがわれたものを着て、それでいいじゃないかと考えるのは、またそう見えてしまうのは、先ほどの靴下を洗う男とは正反対にみえながら、裏と表の姿かもしれない。
随筆の冒頭で「諸君」と呼びかけていたのは、俳優の殿山さんも同じである。
殿山さんについては、昔緑坂でいくつか書いた。
えと、どこにあったか、あとでね。