水が立っている。
 
 
 
■ 六月になるとそうだ。
 洗ったばかりの指の先や欠けた奥歯の触りから、おかしなことを思い出す。
 あれは何時だったか、こんな風に走っていて誰かを迎えにいった。
 視ていたものは多分自分で、モノレールの下の運河が黒く光っていた。
 ちらちら横眼で眺めながら、このオイルも山を過ぎたなと感じている。