十二月の花束。
 
 
 
■ 彼女は煙草を吸っている。
 寒いのに短いスカートを履いて、バックのようなものを抱えている。
 女子プロなのだ、と気づくのに僅かに時間がかかった。
 

■ 偽物だと一目で分かるロレックスを巻いた老人が、キャリーを曳いて帰ろうとしている。
 勤め帰りの男性が、一ゲームやったのだろう、エレベータを押して待っていてくれた。
 下なの。
 はあ、すいません。
 私は彼より若く見えたのか、余所者だと知れただけだろう。
 地下へ降り、入れる駐車場を間違えたことを今更かぞえた。