Ill Wind 2.
■ 一日頭が痛かった。
生理痛の薬をかじる。
コーヒーで流し込んではいけないのだけれども、このホテルのウェイトレスもまたバイトなのだ。
頭を下げ、歩いて戻る。
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■ ill wind は「逆風」とか「悪い風」と訳せばいいのだろうか。
いかにも低気圧というところである。
この作品を眺めていると、何故だかわからないがハメットの小説のことを思い出して不思議だった。
肺病やみのハメットは「失われた世代」の代表のように評されているヘミングウェイより確か7-8くらい年上。前歴もかなり複雑である。
一般に、戦争の時にいくつだったかというのは、後の生き方に相当影響を及ぼすかのようで、我が国で言えば大岡昇平さんなどはその時既に大人だった。
感傷やロマンチックな要因が混ざりようがないのである。
ある日本軍の兵士が撃たれ、意識はあるのだが、大便をもらす。
もう俺は終わりだよ、もらすようになったら死ぬんだと泣く。
そしてその通りになっていった様子を、大岡さんは簡潔な文体で綴っていたことを覚えている。
■ ある大学の講義をまとめた本に、ハメットなどいわゆるハードボイルド作家は、アメリカ文学史の系譜の中でほとんど無視された存在になっていると書かれていた。確かにそうかもしれない。
「マルタの鷹」の原作は、文章の視線が主人公の「目」であったり「指」であったりして非常に独特なものだった。
確かそれを模した映画も製作されたことがあって、監督は誰だったか、カメラ・アイが視線をなぞっただけなので、観客にはなんのことか分からず不評だった。
青年期の適当な時期、チャンドラーに飽き足らなくなると手を出すのがハメットだったりしたものだが、やや乾きすぎていて、周囲で読んでいる奴はいなかったような記憶もある。