Code Monkey Save World
 
 
 
■ カストリ時代 4.と思ってください。
 最近ネットが面白くない、という話をよく聞く。
 黎明期というか、古くから繋いできた人たちである。
 理由はいくつもあるのだけれども、検索して有意な情報に辿りつけなくなってきているというのも、そのひとつだという。


 
■ 先日、やや古い本になるのだが「ニューヨーク人間模様」(為田英一郎著:朝日新聞社刊:昭和58年)を捲っていた。
 著者の為田さんは77~80年にNY支局長だった方である。
 カーターがいてレーガンが出てきて、といった時代。
 日本が国連の常任理事国になるかならないか、といった頃合の空気を振り返るに適したものなのだろうが、最後まで読み通すにはちょっとばかり根気が必要かもしれない。
 
 
 
■ そこに面白い記述がある。
「情報 - 東と西」という小タイトルのものだが、70年代初めにソウルで知り合った初老の言語学者と名乗る男の話である。知り合ったといってもホテルのバーのカウンターで隣り合わせただけのことなのだが。
 言語学者、彼はヨーロッパの出身らしいのだがアメリカ国籍を持っているという。
 日本、中国、朝鮮の三ヶ国語を話すのだが、その日本語はどうも山陰か四国辺りの響きが感ぜられて、その師匠はその土地の女性だという。
 
「言語学者は常に共同生活に応じてくれる若い女性の探索をもって学習の第一歩とし、よきセンセーにめぐり会うとともに場末の映画館を回り、木賃宿を渡り歩くような小旅行を重ね<自宅>ではセンセーとひとつマクラで大衆小説に読み耽るような暮らしをむねとしていたのであった」(前掲:52頁)
 
 為田さんはうらやましがっているのか、うんざりしているのか俄かに判別のつかない調子で筆を進めておられたのだが、要はピロー・トークで言葉を覚えたということだった。
 73年金大中事件があった頃のソウル。CIAとKCIAとが一大情報戦を繰り広げていたところにそうした得体の知れない言語学者が現れ、日本のジャーナリストと歓談していたことになるが、一体彼はなにものなのか。
 そこで何をしているのか。