真横の月 7.
■ どうして真横の月かというと、ある時そう見えたからである。
あれは確かC2辺りで、トレーラーが110で流れていた。あれは対独戦を戦ったT-34より重いんじゃないだろうか。
制限が60であるから、かなり速い。
時々は居るのだろうが、今までここでPCと遭遇したことはなく不思議に思っていた。
ここが順当に流れないと北や東への流通に差し支える。
少し渋滞があるだけで運送の経費も全体で随分と違ってくる。
そんなことを陸送の会社を経営される方が漏らしていたことを覚えている。
■「PRESS」と白く描かれた4トンが飛ばしていく。
空荷であるから、時折リジットの後輪がはねている。
もう何十年も見慣れた光景で、そのまま地の底に吸い込まれていくかのように、剥がれたタイルを横目に見ながら外に出ればすぐに空港が見えてくる。
これは1号線/横羽の話だが、ここを往復するPRESSもほぼ車の性能の限界まで使い切り、エンジンにカーボンが溜まる暇などないかのようだった。
彼らを抜くことは、かなりがんばったつもりでも至難の技である。
車の性能差から一時は前へ出ることもできるのだが、気がつくと彼はすぐ隣に並んでいて、例えば3車線ある湾岸への合流で、その外側から被せてくる。
スバルのインプが、そうやって眼の前で抜かれていくのを私は見ていた。
あのPRESS、ダブルのSタイヤ履いてるんじゃないか。
そう悪態を付きたくなる程、彼らはコンスタントに速いのである。
■ ちらりと眺めると、満月に近い月が真横にある。
ここは地上何十メートルになるのか、普通の高さのビルが下に広がっているのだから都市というのは暴力的で、こんなところで生まれ育ち死ぬというのも、安い喩えだが荒野だった。