地平線の話 5.
 
 
 
■ 冬になると旧いサーブ、というのは私にとって軽い刷り込みに近い。
 ヒーターが効くから。冷房はやや弱いから。
 雪に埋もれた中、エンジンが単調に唸っているから。
 手袋をして、センター・トンネルにあるキーを捻るから。
 ほとんど根拠はない。
 
 
 
■ サーブならカブリオレですよ。
 と何年か前、甘木君が言っていたことがある。
 あれか、確かにいいけどさ、幌いくらするか知ってんの。
 私は懐疑的だったのだが、権之助坂あたりで20代か30代の男性が乗っているのを何度か見たことがあった。
 形から入ってんだろうな、と思いながら人のことは言えない。
 幌は純正で40万はするだろう。工賃を入れれば、ともすれば車両価格を上回ることになり、それで次第に数が減っていくのである。
 この辺り、W124のカブリオレなどと通じるところもあった。あれは天井からオイルが垂れてくるらしい。
 何時だったか環七で、パンツをずり下げて履いているような若者達が4人、W124のカブリオレの幌をあげ、車内で踊っているのと並んだことがある。でかいトレーラーの後ろでだ。
 モンキーがベットでジャンプしたという英語の歌があるけれども、うれしかったのだろう。
 
 
 
■ サーブで聴くのはやっぱり「エンヤ」ですかね。
 痩せてから言え。
 でもさ、あれだとどうも安産祈願みたいな感じなんだよなあ。