父も夢みた母もみた。
■ 古いホテルに入ると、そういう歌の一節が浮かぶ。
旅路の果てのその果ての。
ここで恋した彼らのご子息が再び訪れる。
■ 北か西への旅の途中、村外れにあるそうしたところに泊まった。
市町村合併で、今は村とは呼ばないが、そこは流れである。
おねえさん、お湯でないよ。
あら、ごめんね(ここは方言である)。これから石油入れるからね。
■ 暫く経って枕元にある電話が鳴る。
私はそのままの姿で慌てて出る。
お客さん、お湯出ましたか。