砂の岬 10.
 
 
 
■ ハーンの怪談も面白いのだが、どこか美化しているのではないかという物足りなさが私には残っていた。
 投げ出されたような感触がない。
 よく濾過もしくは翻訳はされているけれども、畢竟近代という枠組みの中から見返しているようなところがあって、今の生活感覚からそう遠くないところにいる。または、ある。
 それはハーンの出身や来歴によるものと指摘されているが、本当のところは、もう少し理不尽なものではないかという気もするのだった。
 
 
 
■ 理不尽さというのはつまり闇の話である。
 内臓をさらけだした後の空白というか、穴のようなもの。
 その上に眼や口に似たものがついていて、こちらを眺めている。