コタツ龍之介 8.
 
 
 
■「コタツ龍之介」とは、今の私の気分である。
「大菩薩峠」というのは全41巻にもなる長編小説だが、従来映画になったりするのは前半の部分が主であった。
 半ばというか後半になってくると、いちおうの主人公と目される机龍之介はなんとコタツの中に潜り、うつらうつらとしている。
 どこまでが本当でどこまでが夢なのか、定かではない書き方となり、物語に荒筋やドラマのようなものを求める一般的な立場からは、難解であるとか、言わば「観念小説」であるとも評されていた。
 いわゆる「曼荼羅」である。
 
 
 
■「大菩薩峠」のことは、まずは戦後の桑原武夫あたりから始めることになるのだろうが、長くなるのでやめにする。
「果てもない道中記」(安岡章太郎)である。確かに果てもない。
 要はうつらうつら、というところに私は反応したのである。