浮雲 2.
 
 
 
■ 高峰さんという方は、半ば孤児のこころを保っておられた。
 それでいて、次の日は焼け跡になることを少しも怖くはないと思われてもいた。
 池辺良さんのご自宅の界隈に住まわれ、坂を下って行けば雑駁な市場なり路地がある。
 坂の上としもの界隈は、横浜山手を例に引くまでもなく、すこしばかりは境界だった。
 
 
 
■ 暗闇坂の近くにいい店があって、暫く通った。
 まだ騒がしくなる手前だったろうか。
 近くに如何にもという名前の店がいくつか出きて、ITバブルの寵児と呼ばれた彼らが、一番高いのもってこいやと声を高くした頃、味が落ちる。