浮雲。
 
 
 
■ 今、成瀬監督の「浮雲」をモニターに映している。
 スチルというか適宜止めた画像だが、通して眺めていると一切仕事をしたくなくなり、では見なければいいのだが、そうもいかない。
 
 
 
■ 何時だったか、役者の方と酒を飲んだ。
「浮雲」の話になり、その方は知らずに涙ぐんでいる。
 ああだったんだよ俺も。
 親父が浅草でね。
 
 
 
■ どうしようもなくなって今こうなっている。
 忘れられない女もいるし、夢にも出る。
 おふくろや親父や。
 その方の芝居を眺めていると、目立たないがその経緯は表情に滲んでいて、それでいて不思議な覚悟があるのである。