夜の波止場にゃ。
■ 歯並びを眺めていると、グロテスクだなと思うことがよくある。
自分を含めてだが。
そこにはいわゆる育ちというものが、そればかりではなく、過ごしてきた歴史のようなものが顕れる。
第三の新人と呼ばれた作家の方々の何人かは、40歳で既にして総入れ歯だった。
入れ歯を外して、相方の妙齢がどういう反応を示すかを腹這いになったまま確かめていくという記述がどなたかの作品にはある。
片一方の肺がなかったりすることが、そう珍しくなかった時代のお話だった。
■ 川崎でも横浜でも。
または地方都市の工業誘致団地の先や、こじんまりした港町の突堤でもいい。
大体すこし錆びた自動販売機だけがあるのだが、すり抜けるとそこは黒い海のようなものである。
どこかガソリンの匂いがして、そこに生のものを流した水が残っている。