池辺良の色気 4.
■「乾いた花」のラスト近く、池辺さんが敵対する組織の親分を刺殺しにでかける場面がある。
のちの東映やくざ映画で定番となるプロットだが、場所は当時大流行していた「名曲喫茶」だった。クラシック音楽を鑑賞するという。
横浜にいくつそうしたものがあったのか、私には分からないのだけれども、例えば高倉さんの「冬の華」でも名曲喫茶はたびたび登場し、こちらでは健さんが神妙な顔をして音楽を聴いていた。
■ この場面を見たとき私が思い出したのは、関川夏央さんと谷口ジローさんの「海景酒店」という作品である。確か80年代終わり。
フレンチ・ノアールを劇画という舞台でどこまで表現できるかを実験したかのような香気溢れる短編が含まれていて、ハードボイルド好きなら必ず目を通していると言ってもカゴンではない、かも知れない。
中にやくざ組織の中堅幹部というか組長が、ギリのため仕事に出かけるところがあり、そこも「名曲喫茶」なのだった。
劇画ではコントラストの強い絵柄である。
つまり伝統は延々と続いているということで、個人的にはブラームスはいまひとつである。