オイルド 2.
■ 鞄に、油を染み込ませる種類のものがある。
ツインの単車乗りならお分かりだろうが、英国製のジャケットに、まるで160を暫く続けたヤマハかカワサキかトライアンフの、じゃぶじゃぶして泡だったオイルに暫く浸したようなものがあって、若造には憧れだった。
クロムウェルのヘルやガラスの角に線の入ったゴーグルと似たようなものである。
■ ドライヤーを弱くして、缶をあぶる。
なかなか温くならず、廻りからゆっくりと流れ始めてはいくが、芯のところがまだ硬いのだ。
マイクロファイバーのクロスにオイルを掬い、縫い目の辺りからゆっくりと浸していく。
百舌に似た鳥が一羽いて、数秒で飛び立つ。