シナトラのクリスマス。
 
 
 
■ アクアスキュータムのトレンチコートを着ていたことがある。
 主ら、金もねえのに(つげ義春「赤い花」チヨジの台詞)
 白いそれで、丈が僅かに短い。
 ライセンスで作られたそれより、僅かに綿の番手が荒かったような記憶もあるが、白というところが既にして塹壕の中のお話ではなかった。
 
 
 
■ 次第に袖口が擦れていく。
 腕時計のせいだが、数ミリほど修繕してもらい、その後も数年は羽織った。 粋がって、空いていた私鉄沿線で立ったままでいる。