インナーシティ。
 
 
 
■ という概念がある。
 囲い込まれた街、というようなものだが、都心部にあるやや高級なモールのようなものと考えればいい。そこに集うある層のひとたち。
 
 
 
■ ある午後、私はコンビニの前に車をとめた。
 タバコが切れたからである。
 灰皿の近くに40前後の男がいて、不動産の看板を組み立てようとしている。
 その角にできるという20数階建てマンションのチラシを持っていた。
 彼は吸殻を捨ててから仕事に入り、店から出てきた私にティッシュの入った袋を渡した。
 その角でもらったよ。
 それは失礼しました。
 よく喋る50男のいるスタンドでガスを入れた時、同僚が傍にいたのである。
 
 
 
■ 彼にはプライドがある。
 どうしてここでこれを配っていなければならないか、未処理の表情が残る。
 習慣になっているのだろう。片手でスマホをスライドさせている。