隣のアストン 5.
 
 
 
■ 私はやや旧いDB7が好きである。
 例の、ジャガーのXKとプラット・フォームを共有したという奴である。
 6発のそれであれば、それほど維持に神経を使わなくても済みそうだという計算もある。
 その辺りをシレッと乗っていられたら、と夢想もするのだけれども、アトリエの隅でゴザをひき、その上で仕事しているようじゃ駄目なんだろうか。
 資料を引っくり返していると、坐る場所がなくなる。
 
 
 
■ いつかの夜のことだった。
 羽横線、横浜の連中は横羽と呼ぶのだが、そこを東京方面に戻ってきている。
 目の前に初代のユーノスが走っていて、上には白のHTが乗っかっていた。
 この車ももう20年経つだろう。若干車高が低く、微妙に広いタイヤを履いているが太すぎもしない。
 掻き分けるようリズミカルに、細い横羽のコーナーを抜けていく。
 上手いものだな。
 私はその後ろに付いていた。
 
 
 
■ 車は値段じゃない。
 下手なスクーターよりも安価に買えるだろうそのユーノスは、充分に手が加えられている。
 たった1600、ターボもSCも付かないそれは、多分0-100が10秒切ったか切らないかの按配だっただろう。
 なに、BMWの2002 tiiだってそんなものだった。
 こういう奴がいるからね。
 どんなフロントをしているだろうと、一瞬抜き、ミラーを眺めると丸いドライビングがバンパー左右に付いている型だった。
 丸眼のフォグやドライビングというのに、何故だか弱いのである。