残花三昧 4.
 
 
 
■ 北へ。
 と、緑坂ではよく書くけれども、桜前線が北へ向かうのと並び、踊りながら旅をするひとたちが少なからずいるという。
 半ば花に酔いながらである。
 俗なことを書けば、退職された方がかつての歌人に自らの姿をなぞらえて、のことが多いのだろうが、こうした隠居または出家文化への傾斜は身体の中に根強い。
 
 
 
■ 近くのスタンドに若いものがいて、車一台分くらいの単車に乗っている。
 普通選ばないだろう、MVアグスタの末裔。
 時々声を交わすのだが、オイルだけはいいものを入れてるのだそうだ。
 1リッターで、とんかつ2回食えるよなぁ。
 そうなんですよ。
 とんかつになぞらえるのが一番分かりやすい。
 彼はこの季節、バイトの休みをとって北へ向かうという。
 すぐ雨になるんで、テントは辛いっす。