あの人が逃げてゆく、雨の曲がり角。
 
 
 
■ プル・オーバーに右手だけ皮手袋というのはおかしい。
 しかも雨である。
 京浜工業地帯。その半分は奥地の辺り、今時分だと盛大に炎が出ている。
 ちら、ちら、と緋色のそれが揺れる。
 
 
 
■ この界隈に工場を持つところと薄く関わったことがある。
 従業員数が数万という規模で、半ば軍隊のような階層があり、帰りには黒い車で送っていただいた。
 運転されている方にセンセどちらまでと問われるのだが、妙に居心地が悪い。
 紅生姜を山盛りで、牛丼が食べたくなったことを覚えている。