北のうねり。
 
 
 
■「後期近代の眩暈」という本がある。
「排除から過剰包摂へ」が副題。
 ジョック・ヤング著:木下ちがや・中村好孝・丸山真央訳:青土社:2008年
 これは「排除型社会」の続編なのだが、世界が9.11などのテロを経験した後に書かれているところが特色である。
 
 
 
■ いつだったかエレベーターの中で若者と一緒になる。
 髪が長く金色で、長身を折り曲げるように水の箱を抱えている。
 これ宅配なんですか。
 はいっ、1本からでも届けます。と、彼は私にチラシのようなものを渡した。
 100円前後の水が何種類。確かに安いことは安い。
 
 
 
■「早朝外に出ると、街頭には誰もいない。だが犬がひいひいと家にたどりつくまでには、誰がみてもぼこぼこで古びたステーションワゴンとピックアップトラックとすれちがう。ゆっくりと止まったこれらの車が降ろした積荷は、褐色の肌の男性である」
(前掲:175頁:不可視の労働者)
 彼らは家内サービスを賄う。しかし昼頃までにはその姿を消していく。
「人びとは子どもが欲しいし、ペットを飼いたいし、きれいな家が欲しい。でも専門職に就くカップルは(略)暇がない」
「自分の関心があることについては長時間精力を傾ける、あるいはスポーツや娯楽に熱中するということはともかく、かれらにその余裕がある限り、人生は本質的に喜びだと考えて育った世代が自分の床をモップがけしトイレを掃除することの折り合いをつける可能性はなかった。
それをやるのは普通、名前がZかAかOで終わる誰か(ラティーノ)でなくてはならないのだ」(前掲:176頁)