濱の風太郎。
■ あるとき銀座裏で飲んだ。
東京でじたばたしている人以外、意外に思われるかも知れないが、一本路地を入ったその界隈はなかなかコクのあるところで、ややマニア向けという風情である。
■ 階段を降りていくと、小さなカウンターだけのコーヒー屋がある。
60代半ばくらいのマスターが独りでやっているところだが、そこにはお店から卒業されたのだろう妙齢本格派が、今日始めての食事を取り、それからタバコを吸っている。
その隣にはベストを着た男性が新聞を読んでいて、いわゆる銀座雀である。
■ あそこの家賃が60でしょ。
下だと半分以下なのよ。
2人でやっているっていってもねぇ。
マスターはダスターでその辺りを拭いている。
彼は独身なのかもしれない。語尾が独特だった。