地域の名士。 
 
 
 
■ がよく乗るという車に、訳あって1000キロばかり乗った。
 トヨタの新型である。走行は1万いかない。
 極めていい車で、細い路地では相手が止まってくれる。
 黒塗りだからかも知れない。
 地方の国道やバイパスの辺りを流していると、これが日本なのだという気分がしみじみと滲んでくる。
 ハンドルは軽くアクセルは電制で更に軽く、ナビの音声は低い声の妙齢本格派の秘書にも似て、至れり尽くせりであった。
 こういうのもいいのかも知れないな、と暫くは思う。 
 
 
 
■ 高速を暫く走ると、100キロ以上出そうという気にはならない。
 怖いのである。
 怖いというのは、中立辺りが曖昧なハンドルと、それが急に切れ込むのと、全般に何処へ流れるか分からない足回りの感触からである。
 サスのモードを堅いものに変えるとややマシなのだが、こんどは2トン近くある車重が気になる。ブレーキをやや強めに踏むと車体は僅かに揺れる。
 暫く走ると、何故かは分からないが、足から下がだるくなった。
 シートが正座か胡坐用にできているからかも知れない。