なにかあると「堕落論」
■ このご時世であるから、坂口安吾の「堕落論」を引っ張ってくる方がちらほらおられる。
なにかあると「堕落論」である。
どちらかと言えば「日本文化私観」方が評論としては優れていると思うのだが、いずれにせよ本質は青春の書であるような気もする。
文春の池島信平さんに「雑誌記者」という本があるが、ここでは安吾との交流につきかなり踏み込んで記されていた。戦中から戦後の混乱期の空気が見事に再現されている。
池島さんが安吾を世に出したと言っても過言ではないようなところもある。
■ 日本浪漫派であるとか皇国史観であるとか、または延々と繋がっていた独特の精神主義の流れを踏まえた上でないと、当時安吾の発言がどうして新鮮に映ったのかはおそらく理解はされないだろう。
ところが。
なにかあると「堕落論」の方々は、案外根が観念論なんですね。