ダンディズム。
■ 何時だったか新宿へいく間、手元にあった文庫を鞄の隙間に詰めた。
めずらしく電車だったのである。
新宿の地下道を歩いたのは何年ぶりだろう。
時間をちょっとだけ持て余し、喉が渇いたことと煙の補給で地下にあるカフェというかなんというかに入った。
こうした店というのは土地によってその客層も雰囲気も様々だが、やはりここは新宿なのだという素材と色使いの妙齢本格派が、初老の男性と向き合い煙を吹かしている。
一度に3本くらい唇に挟んでいるかのような勢いである。
隣では、取材中なのかきちんと背広を着たこれも初老の男性が、30代半ばの男と熱心に調べ物をしている。
紺の背広に茶色の尖った靴というところが独特で、新宿紳士といった風情だった。
■ 私はカレー・パンを食べながら、Beau Brummell について書かれた本を読んでいた。生田耕作さんの名著である。
この歳になると興味深いのはその零落していく過程であって、晩年は盛りを過ぎた博打打ちと推移としてはそう変わりはない。しくじるきっかけもまたそうである。