知恵で武装した中学生。
■ 中学というのは、旧制のお話である。
広津さんは芥川をそのように評していた。
どこか都会っ子の、線の細い、けれども口の悪い中学生の機知と見得。
亀戸の悪場所で、芥川は実際にはいたしていない。
六畳を衝立で二つに分けただけのところに二組が入る。
友人が隣に居たとしても、とりあえずやることはやるというのが、そうしたところでの流儀でもあるのだけれども、ま、実際そうもいかない訳であります。
はやいとかおそいとか友人の手前。
■ 芥川はその遺書に、やや美化してそのことを書いている。
格が上のところ。
例えばなんとか楼みたいなところにあがったのだということにしている。
原稿を書き上げ聖書を開き、ショーペンハウエルの弟子のような、かなりマニアな哲学者の名前を挙げ、それから薬を飲んだ。
確か聖書は胸の辺りに置いてあったと思う。
マニアな人名を挙げる趣味というか傾向について、広津さんはとてもよく分かるものだと書かれている。