あの時代。
■ 古本屋でやや旧い作家の著作を求め、その辺りに置いておくというのは、ほとんど道楽の世界である。
何時か読むだろうと、そのままの作品もあり、これは面白いなと壊れかけたソファの上で数時間を過ごすこともある。
時折逃避する陰惨な隠れ家に持っていくとこれは完敗で、ほぼ仕事にならない。その癖、辺りに転がっている数年前の週刊誌を隅から隅まで読んだりもするのだが。
■ 広津和郎の場合は、芥川と宇野浩二について書いたものが愁眉だった。
「あの時代」という作品である。
宇野浩二が精神をやられ一時入院するまでの顛末。歌人であった斉藤茂吉も主治医のような役柄で登場する。
芥川の自死の手前、亀戸にあるちょんの間にあがって騒いでいる辺りは、自らも便所下駄のような相方とあれこれしていただけあって単純に面白い。
当時芥川は37歳頃。
人生が、中折れになっていた時分だと広津さんは書いている。