広津和郎と葛西善蔵。
■ その本は新潮社から出ていたものだった。随分と古い。
葛西善蔵については前からひっかかっていたところもあり、何作か流して読んだこともあったのだが、全体としては敬して遠ざかるといった按配だった。
理由はいずれ書くだろう。
■ つげ義春さんの漫画の中に、売れない資本漫画作家が出てくるシリーズがある。
売れもしないのに伊豆辺りにいって作品をモノにしようとし、芸者を呼び、宿代が払えず、つげさんらしき主人公の若者を置き去りにしたまま夜逃げをするというような、なんとも救いがたいお話なのだけれども、どこか間が抜けているというか不器用で憎めない。
その作家先生が、葛西善蔵の名を口にする。
ブンガクも少し齧ったんだけどね。葛西に馴染めないのはまだ若いんだね。
確かそんなような台詞だったと記憶している。