ランチア・ベータ・モンテカルロ。
■ 私はこの車が好きである。
どれくらい好きかというと、かつて深夜TVで流れていた刑事コジャックに出てくる馬鹿でかいオールズと同じくらいだろうか。
こういう比較もどうかとおもうが、なんというか対極にある車なのだ。
■ 随分と前、近くにあるコンクリ製の階層式パーキングでモンテカルロを見た。
30秒ほど立ち止まっていたが、どういう道楽者がこれを都心で飼っているのか。
どうせロクなもんじゃないだろうな、と半ば羨望に似た気分で見なかったことにした。よく年寄りがするあれである。なかったことにしてしまう。
〆切か支払いか、切羽詰った気分でいたからかも知れない。
モンテカルロは、今となってはどうということもない性能だし車体も小さい。深夜の首都高などでは電池式の車にも煽られるだろう。これで恐山近くまでいく気にはならない。任意保険のレッカー・サービスも、列の外という扱いになるのではなかろうか。
■ だが、いいのである。
あのフロントの造形と周囲を取り巻く黒いプラスチックは、チープでしかも端正だった。X1-9と同じテールは事情を知れば興醒めだが、なにロータスだってアストンだって他車の部品を流用している。
好みというのはどこかで時間が止まってしまうものだけれども、メンテや錆や電気や、その他数えれば救いがたいダロウ泥沼については棚にあげ、さてどこでどう乗ればいいものか。
それが少しわからないでいる。