霧の布きたる夜 2.
■ 遠野物語の99話にある夏の霧というのはヤマセである。
山背と書くらしい。東風ともいう。
北東から吹く湿り気を帯びた重い風は、とたんに霧を発生させる。
東北地方で夏の冷害といえば山背によるものだとされていた。
■ 私は竜飛岬に抜ける道でそれに遭遇した。
いわゆる今現在のNAVIのシステムというのは高低差を勘案しておらず、信じているととんでもないルートを案内される。
抜けていくと海岸沿いで、山をひとつふたつ。
兎と狸と。これで熊が出たらどうするんだと思いながらトロトロ走った覚えがある。
50センチ先の視界がない。戻るに路肩は崖で、その下は単に海である。先を進むしかないのだが、ちょっとこれは洒落にならないかなとこの時は真面目に後悔をした。
朝までここで停まっているとして、水も食べ物もなにも持たないのである。
いい気な品川ナンバーはそこでフロントを擦った。
今も残っている。