死ねば、恐山へいく。
■ 下北地方では、いわゆる「山中他界観」が強いといわれる。
山が神や霊の居所であるという観念である。
「死ねばおやまさいぐ」
これが海になると、熊野灘辺りでの入水などに繋がり、この辺り、簡単に説明はできない。
■ そんなことを漠然と思い出しながら、せんだって公園にいた。
文庫をポケットに、散歩にきたのである。
白人の子供が遊んでいて、マミーと呼んでいる。
高価そうな小型犬を連れた男が、細いブーツで歩いている。
ひとにはいくつもの顔があって、その一部だけを目にしている。